「祭りの日、屋台のお面を盗みに行こうよ」

地元の夏祭りの前日、年下の彼女の片平優奈は突然そう言った。

いつも突拍子もない事を言うような彼女だったけど、
当時の俺にとってはそれが楽しくて妙な期待をしていた。
気分屋で、あまり懐いてくれないけど、放っておくとなんだか心配で。
そんな彼女の事をいつしか好きになっていた。

「買ったお面じゃない、盗んだお面が欲しいの」

あの祭りの日にそう言う彼女に俺は渋々付き合った。
俺たちはとある作戦を立てて屋台のお面を盗む事を決行する。
だが……。

賑わう人の中をかき分けて走る優奈、
それが俺が最後に見た優奈の姿だった。
あの日を境に、優奈は突然消えた。

あれから3年、俺は地元を出て東京の大学に進学した。
そして、同じ大学に進学した幼馴染の上杉理恵と付き合っていた。
最近はゼミも始まって忙しくなったが、
理恵と一緒に勉強に励んで充実した日々を過ごしている。

地元ではあの夏祭りを一ヶ月前に控えたある日、俺のスマホに1通のメッセージが届いた。
差出人不明のメッセージにはこう書かれていた。

「祭りの日、屋台のお面を盗みに行こうよ」

3年前に止まっていた俺たちの時間が動き出そうとしていた…。


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