───気が付くと、そこは知らない場所だった。
そびえる石造りの建物、無闇に広い敷地、それに止まった時計塔。 形容するなら英国風。 たとえて言うならアリスのワンダーランド。
俺“月城千秋”と幼なじみで同居人の“いなほ”は 揃って今日から二年生に進級する、普通で平凡を絵に描いたような一般庶民。
まあ、家業は流行らない剣道場で世間の水準からすれば裕福の三歩手前だが、 俺といなほとじじいの三人は呑気に暮らしていた。
ところが、通い慣れた公立へ桜並木を自転車で走らせてる途中に異世界の扉が。
「わたくしは“さくら”と申します。以後宜しくお願い致しますね」
突然現れたのは白ウサギならぬメイドさん。 丁寧にお辞儀をして、俺達の前に立ちはだかって……。
───気が付くと、そこは知らない場所だった。
どうやら学園。でも随分ゴージャスな佇まい。 かなり立派な石造りの建物、並ぶ美術品、フカフカの絨毯。
そこで出会う勝ち気なお嬢様と物柔らかな少女、可憐な姫君、玲瓏たる黒髪美人に白馬の王子様。 煌びやかな乙女達の出迎えに、動転するので精一杯。 その上明かされる、俺が知らなかった幼なじみの過去。
「我が学舎へようこそ。英駿院は貴方達をより高める場所となるでしょう」
どうする俺?どうなるいなほ!? っていうか“英駿院”高等学園って一体何なの!?


本体 补丁